家に帰ると、誓耶は真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
もう9時だから、叔父さんも帰って来ているはずだ。
出来れば会いたくない。
誓耶の両親は幼い頃に離婚、誓耶と兄は母に引き取られた。
が、すぐに母親も蒸発。
二人は父親を探したが行方知れずだった。
その時兄は18歳、誓耶は8歳だった。
10も離れた兄は、誓耶をずっと守ってくれていた。
その時も、優しく励ましてくれた。
父方の叔父夫婦に引き取られるのが決まってからも、兄は親代わりで。
でもその兄ももういない。
誓耶が9歳の時に仕事に行く途中、車にはねられて事故死した。
今でも兄を失ったときのあの虚無感がよみがえる。
兄のいない家なんて、誓耶にとっては家じゃない。
叔父夫婦に息子がいて、一応3つ上に兄がいることにはいるが、亡くなった兄を思い出させて余計つらい。
誓耶は前からあまりここの家族とは関わらないようにしていた。
向こうも自分達を嫌っているし。
よその女の子どもを押し付けられたらそれは不快だろう。
あの人達は誓耶がどんなに遅く帰って来ても何も言わない。
それをいいことに誓耶は大抵遅くまで外で時間を潰していた。


