胡蝶蘭

「偉槻?」



返事はない。



這うようにして、台所に向かった。



いない…。



なんでぇ?



自分の嗚咽が、部屋に響く。



「偉槻ぃ…。」



どこ行ったの?



心細くて仕方ない。



ペタンと台所の床に座り込み、玄関を見つめる。



偉槻がいつも履いているスニーカーがなかった。



出てったの?



どうして?



どうしてあたしを置いてくの?



涙で視界が歪む。



誓耶は乱暴に涙をぬぐった。



布団にも戻らず、誓耶はそこで泣き続けた。



どうしていいかわからなかった。



頭のどこかで偉槻はそのうち戻ってくるとわかっていても、怖かった。



どれだけそうしていたのか、わからない。



誓耶は泣きながら偉槻の帰りを待った。