胡蝶蘭

「そんなこと言うなよ…。」



ぐすっと誓耶は涙をぬぐう。



「あたしは偉槻に謝って欲しくなんかないんだ。
今度そんなこと言ったら怒るからな。」



偉槻は返事をせずに誤魔化した。



誓耶は不満そうに唸る。



「なーあ、聞いてる?」


「あぁ。」


「じゃ、なんとか言ってよ。」


「はいはい。」



誓耶はパシンと偉槻を叩く。



偉槻は笑って、誓耶の手を掴んだ。



指先にキスする。



誓耶はくすぐったそうに手を引っ込めた。



「もう、大丈夫か?」


「うん、起こしてゴメン。」



そう言って、誓耶は偉槻の胸から顔を上げ、時計を見る。



「まだ1時だ。」



ゴメン、と誓耶が萎れる。



偉槻は明るく言った。



「気にするな。
大体俺は夜行性だからこの時間は俺にとって昼だ。」



ちょっとわかりやすすぎるフォローだったか。



内心頭を掻く。



誓耶はへらっと笑って首を傾げた。