胡蝶蘭

「怖い夢でもみたのか?」


「うん…。」



偉槻の首にしがみつき、誓耶は頷く。



「そうか…。」



偉槻は優しく何度も誓耶の頭を撫でる。



誓耶は静かに泣いていた。



ズキリと胸が痛む。



また、泣いてる。



…俺のせいで、泣いている。



いつだったか、慎吾とした話を思い出した。



「泣かすまでは許す」と慎吾は言った。



…今、誓耶は泣いて苦しんでいる。



これは完全に、アウトだな。



「偉槻…。」


「なんだ?」



安心させようと、偉槻は出来るだけ優しい声色を出した。



「ぎゅってして。」


「してんだろ。」



言いながら、抱く力を強める。



母親に甘える幼子のように、偉槻から離れようとはしない。



「怖かった。」


「うん。
本当に悪い。」


「偉槻は悪くないだろ。」


「悪いよ、俺が原因だろ。」


「違うよ。」



掠れた声で、誓耶は抗議する。