胡蝶蘭

現実が信じられない。



どういうことだ。



「偉槻、しっかりしろ。」



店長が偉槻を揺さぶるが、偉槻は頭を抱えて動かない。



「ちょっと…混乱して…。」


「ああ、ああ。
俺だってわけがわからん。
ついさっき、ポテト置きにきたときはまだ居たんだよ。」



なのに、と店長が言葉を切る。



「偉槻、すまん。」



頭を下げる店長に、さすがに偉槻は慌てた。



「こっちこそ、俺のせいで迷惑かけて。」


「お前じゃないって。
俺も探しにいくから、お前もついてこい。」


「はい。」



本当はそこは、偉槻が手伝ってくれと頼むべきところなのに。



店長は後は頼むと従業員に言い置き、外に飛び出した。



偉槻も頭を起こして追いかけた。



「偉槻、お前ケータイ持ってんな?」


「はい。」


「じゃ、見つかったら連絡しろ。」


「はい!」



俺こっち行くから、と言いながら店長は既に走り出していた。



その背中に軽く頭を下げ、偉槻は反対方向に走り出した。



頼む、見つかってくれ…。