胡蝶蘭

こんなの、嫌だ。



偉槻に優しく抱かれたときのことが、思い出される。



優しく頭撫でてくれて。



あたしが苦しそうになったら、手を握ってくれて。



ちょうどあたしが欲しいタイミングでキスしてくれて。



事が終わった後は、腕枕してあたしが寝るまで待っててくれる。



そして、必ずあたしが寝てる間に、あたしの寝顔に謝るんだ。



偉槻のベッドは、あたたかい。



凄く、あの時間が幸せだ。



なのに、今、あたしはこんなとこで…。



「…何、泣いてんの?」



男が、誓耶の顔を手で包んだ。



誓耶は顔を背ける。



涙が何粒もこぼれた。



「男寝取られた女って怖いよな?」



狂気じみてるよ。



外道だ、あんなの。



あたしは悪いことしてないのに。



ただ、偉槻に恋してそれが叶っただけ。



放っといてよ、そっとしておいてよ、あたし達を。



偉槻…。