胡蝶蘭

「ってか、あいつは泣かないだろうな。」


「そうか?」


「俺、あいつが泣いたとこ、たぶん見たことないもん。」



へぇ。



確かに、何でもかんでも泣きそうな女ではないな。



「ま、泣くとこまではいいんだな。」



偉槻は結構口が悪い。



自慢ではないが、女との喧嘩で相手を泣かせなかったことなど一度もないくらいだ。



誓耶のことが好きで仕方ないが、きっと怒鳴ることはあるだろう。



「でも、あんまり可哀想なことしてくれんなよ。
俺だってあいつが可愛くて仕方ないんだから。」


「はいはい。」



保障はしないぞ、言っとくけど。



「ってか、あいつ、どんな?」



わくわくとした表情で、慎吾が詰め寄ってくる。



「どんなって?」



さり気なく顔を遠ざけながら、偉槻は新しい段ボールを抱えた。



「甘える?
それともきつい?」



うーん、どうだろう。



どさりと箱を下し、偉槻が軍手をはめたまま頬を掻いた。



「半々だな。
機嫌が悪いときは、睨んでくるし。」


「えー、いいないいな。」


「…どこがいいななんだよ。」