胡蝶蘭

偉槻は頭を抱えた。



なんで言いふらすんだよあいつ…。



面倒なことになるのは嫌だ。



そんな偉槻の様子を見て、慎吾が慌ててフォローした。



「俺、誰にも言ってないぞ?
言うつもりもないぞ?」


「ああ、信用してるよ…。」



だが、そういう情報ってのはどこから漏れるかわからないから怖い。



しかも、リークした奴に悪意がないってのが厄介だ。



「誓耶もそういうこと言いふらす奴じゃないから。」



気遣わしげに、慎吾は偉槻を窺う。



「あぁ、そうだな。」


「そうそう。
悪かったな、俺がいらないこと言った。」


「いや、いいんだ。」


「悪かった。
でも、お祝いが言いたくて。
仲良くやってくれな。」


「おう。」



絶対に誰にも言わないが、俺は相当奴に入れ込んでる。



よほどのことがない限り、俺から別れ話を持ち出すことはないだろう。



…今のところは。



「な、訊いていい?」


「何を?」



軍手をはいて仕事の準備をしながら、慎吾は言った。



「どっちから告白したわけ?」