胡蝶蘭








「いっつっき~!」



テンションが高いのがやってきた。



久し振りにこんなに早く起きた。



そのせいで頭が重いのに、うるさいのに捕まったもんだ。



「お前、朝からうるせーよ。」


「いいじゃん、俺今幸せなんだよ。」


「一人で噛みしめてろ。」



頭を掻いて、歩き出した偉槻の背中に、思いがけない一言が投げられた。



「お前にも関係あることだぞ~。」



なんだ?



時給の値上げか?



上の空で「何~?」と尋ねると、慎吾はちょこちょこと隣にやってきて、耳元でささやいた。



「誓耶とのこと。
おめでとさん。」



一気に頭が醒めた。



手に持っていたコーヒーの缶が甲高い音を響かせてコンクリート張りの床に転がる。



錆びたロボットのように、偉槻は慎吾を振り返った。



「なんでお前が知ってる?」


「誓耶から聞いた。
あいつ、可愛いのな。
ちゃんと報告してくれんの。」



にひっと笑った慎吾の顔は逆光でよく見えない。