胡蝶蘭

「俺は何もないよ。
でも、みんな体調が悪そうなんだ。」


「風邪でも流行ってるのか?」


「みたい。
インフルエンザも何人か出たって。」



それは…。



大変だな。



この季節になると珍しいものではない。



あちこち移動して菌でも運んだか。



「お前は、大丈夫か?
身体、だるくないか?」


「俺は大丈夫だよ。」



誓耶は安心して息をついた。



しかしそれを悟られたくなくて、慌てて口を開く。



「だよな、馬鹿は風邪ひかないって言うもんな。」


「るっせーよ、お前はどうなんだよ。」


「あたしは健康なの。」


「一緒だよバーロー。」



慎吾は凄んで見せて、チョコのシェークをずずーっと飲んだ。



…そういえば。



「慎吾、あのさ。」



誓耶は上目使いに、慎吾を見上げた。



「なんだ?」



口のまわりをぺろりと舐め、慎吾は先を促す。



「あたし、男と付き合うことにした。」


「は!?」



慎吾の裏返った声が響く。