胡蝶蘭

とかなんとか思うものの、結局誓耶の無邪気な笑顔に負け、出来るだけ急いで鍵を開ける。



誓耶は偉槻の後ろで飛び跳ねんばかりだ。



「ほら、入れ。」


「うん!」



お邪魔します、と早口に言い、誓耶は先に中に入った。



やれやれ、と首を振り、偉槻も凍えた手をこすり合わせながら中に入る。



ピッと電子音がし、誓耶がヒーターをつけたのがわかった。



気が利く。



「コーヒー?」



靴を脱いでいる間に、いつの間にか誓耶が台所に立っていた。



少々驚きつつ、緑茶を所望する。



はいよと威勢よく返事し、誓耶はやかんを火にかける。



偉槻は誓耶に任せ、先にリビングに入った。



テレビをつけると、推理ドラマの再放送をやっていた。



人気のあるシリーズで、これは何シリーズ目か。



思い出せない、と偉槻は頬を掻いた。



「お待たせ~。」



湯呑に目一杯に茶を汲み、そろそろと誓耶がやってきた。



「こぼすなよ。」


「わかってるって。」



ほれ、と誓耶は危なっかしく湯呑を突き出す。



お前は、どうしてそういう危険なことをするかな。



おかわりをすればいいものを、面倒くさがって。