胡蝶蘭








金曜日。



偉槻は店長に頼んで、運送に回してもらった。



昼間みっちり働いて、5時過ぎに家に帰る。



昨晩から働きっぱなしの身体を疲労を訴えていた。



が、脳内はフル活動。



アドレナリンのおかげか、頭はすっきりと冴えている。



アパートの階段を上がると、ドアの前に人影が見えた。



確認するまでもない、あいつだ。



シフトを融通してもらった理由が、目の前に。



偉槻の姿を認めると、誓耶はパッと立ち上がった。



その輝かんばかりの顔。



自然と、偉槻も笑みがこぼれた。



まるで忠犬だな。



「おかえり。」


「なんで俺の家でおかえりなんて言われなきゃなんねぇんだ。」


「あたしのほうが先に着いたから。」



当然のように言って、誓耶は早く鍵を開けろと急かす。



ちょっと待てよ、こっちは疲れてるんだ。



労わってくれ。



腕が重い。



さすがに仮眠3時間はキツイ。