胡蝶蘭

心底呆れて、偉槻はため息をつく。



それでも誓耶は食い下がった。



「いいじゃん。
あたし、ここ好き。」


「好き嫌いを言ってんじゃねーよ。
お前、未成年だろ。」


「だから?」


「保護者の許可なく外泊は駄目だ。」


「許可ならもらってる。」



勝手にしろ、が叔父さんの口癖だ。



あ、あと『俺達に迷惑だけはかけてくれるな。』も。



そう言うと、偉槻は渋い顔をした。



「本当に許可は取ってんだな?」


「あたしが嘘ついたことあるかよ。」


「知らねーよ、付き合い長くないだろ。」



確かに。



…でもそこは、納得してくれるべきところじゃ。



「ちゃんと許しもらってるって。」


「わかった。
でも、連泊はなしだぞ。」


「なんで?」



なんでってお前、と偉槻は誓耶を振り向く。



「いいわけないからだろ。」


「…誰が決めたよそんなこと。」


「俺。」



あからさまに嫌な顔をすると、偉槻は軽く咳払いした。