胡蝶蘭

誓耶の髪に顔を埋め、偉槻は息を吐き出した。



「やっと、抱きしめられた。
お前が男みたいに振る舞いたがってる手前、女扱い出来ねぇし…。
ガラじゃねぇし。
やっと…。」



やっと、触れた。



苦しくない程度に、偉槻は誓耶を抱きしめた。



さっきから誓耶は無言だ。



「嫌か?」



今さらながら、一応訊いてみる。



誓耶は首を振ったが、泣きそうな顔で言った。



「あたし、こんなんでいいの?」


「こんなん?」


「女の子で、いいの?」



何を言うのかと思った。



「お前、女だろ。」


「違うよ。
男でも女でもない、どっちでもない中途半端な人間だよ。」


「知らねぇ。
俺にとって、お前はもう女以外のなんでもねぇ。」



それ以外であってたまるか。



好きだ、誓耶。



俺は、お前が好きだ。



匡なんか、蹴散らしてやる。



護ってやるから。



もう、力抜けよ。