胡蝶蘭

瞳が、震えている。



「嘘だろ…。」


「だから、さっき言っただろ。
俺は嘘つかないぞって。」


「だって、嘘だろ…。」



本当だって。



誓耶は落ち着きなくきょろきょろと目を泳がせている。



「嘘じゃないぞ。
なんで、疑う。」


「だって…。
だって、あたしも偉槻好きだから。」



胸が、熱くなった。



言葉が出ない。



心臓が押しつぶされるかのようだ。



…これは現実か?



「偉槻、前、あたしを女としては見ないって言った…。」


「言った。
でも、状況は変わる。」


「こいつは男でも女でもないって…。」


「言った。
でも、お前は実はちゃんと女だ。」



いつの間にか、恋心を抱いていた。



いつからかは、偉槻自身わからない。



「嘘だ…。」


「本当だ。」



力一杯、誓耶を引き寄せる。



呆気なく、誓耶は偉槻の腕の中。