胡蝶蘭

不安そうな顔が、愛しかった。



偉槻はゆっくりと、誓耶の頬に手を添える。



誓耶は驚いて目を見開いた。



前髪の下から、大きな目が偉槻を凝視している。



偉槻は微笑んで、誓耶の頬を撫でた。



「よかった…。」



誓耶は、無意識にか首を傾げる。



「俺は、お前に嘘は吐かない。
信じろ。」


「うん。」



…これから言うことも、本心だ。



聞いてくれ。



偉槻は、胸に秘めていたことをついに口にした。



「お前が好きだ。」



思っていたより、すんなりと言葉が出る。



そして、気持ちも落ち着いていた。



もう、どうにでもなれ。



ここらがいい機会だったはずだ。



俺は、俺の気持ちを、言う。



それだけでいいはずだ。



誓耶、お前は今、どう思ってる?



固まってしまった誓耶を眺めながら、偉槻は返事を待った。



…返事をくれるんだろうか。