胡蝶蘭

「なんか言ってくれ…。」



不安だ。



怖いんだ、頼む。



せめて、何か言ってくれ…。



「…本当に、付き合ってないの?
茉理子が、偉槻に付きまとってる女なの?」


「ああ。
信じてくれ。」



自分の声に、懇願するような響きがあることに気付いたが、そんなことどうでもいい。



誓耶、信じてくれ…。



「あたし、邪魔じゃないんだな?」


「ああ。」


「…馬鹿。」


「…ああ。」



誓耶が、顔を上げた。



唇を噛んで、偉槻を上目使いに睨む。



「お前は、俺と別れたいか?」



ぶんぶんと、誓耶は首を振る。



ほっとした。



物凄く、安心した。



張りつめていた頬の筋肉が緩んだのがわかる。



「誓耶、ちょっとこっち来い。」



偉槻は言って、自分の目の前を指さす。



誓耶はゆっくりとした動作で、這ってきた。