胡蝶蘭








自分の部屋に戻ると、誓耶はベッドに倒れこんだ。



…ショックで心が重い。



気のせいか、身体もぐったりと疲れているような感じだ。



ここ最近、ずっとこの調子。



茉理子に会ってから、あの話を聞いてから、ずっと。



偉槻…。



信じてたのに。



どうして、本当のことを教えてくれなかったんだろう。



別に、その人に嫌がらせなんてしないのに。



偉槻のプライベートだって、割り切るつもりだったのに。



信頼されてなかったんだと思うと、胸が苦しかった。



馬鹿!と心の中で、偉槻を罵倒する。



が、やっぱり偉槻を憎めなかった。



憎めたなら、どれだけ楽なんだろう。



割り切れるなら、どれだけ苦しまなくていいことか。



でも、無理だ。



自分は偉槻に好意を持ちすぎた。



引き返せないくらい、偉槻にのめりこんでいる。



好き。



そう呟いた口が、震えた。