胡蝶蘭

どれだけそこに立っていたかは記憶にない。



我に返った偉槻は、とぼとぼと歩き出した。



もう、あいつは俺に会わないつもりだろうか。



俺は、もう取り返しのつかないことをしてしまったんだろうか。



誓耶が男と女の関係に対して、拒絶感を持っているのは知っている。



俺を見損なっただろうか。



それはそうだろうな。



簡単に女を抱く最低な奴だと思われただろう。



自嘲気味に、偉槻は笑む。



…誓耶。



弁解をさせてもらえるなら、俺はちゃんと事情を説明する。



そうするから。



…………離れていかないでくれ…。