胡蝶蘭

「聞け、誓耶、俺は今、付き合ってる奴はいない。」


「でも、あたしんとこに来た。」


「偽物だ。
そいつは…。」


「でも、偉槻と寝たって。」



頭を殴られたような衝撃。



…あいつか…!



偉槻は言葉が頭から抜け落ちていくような感覚に襲われた。



誓耶は、どこまで聞かされているんだろう。



「否定しないってことは、本当だってことだな。」



偉槻が黙っていると、顔を歪めるようにして、誓耶は笑った。



なんと説明しよう。



いや、出来ない。



偉槻はぐっと唇を噛みしめた。



「じゃ。」



そうしている間に、誓耶はまた同じように笑って、家の中に入っていった。



引き留める気力がなかった。



呆然と立ち尽くす。



俺は、なんてことをしたんだろう。



一晩限りのはずだった。



しかし、冷静に考えたら、それで終わるはずがなかった。



なんて馬鹿だったんだろう。



早く事を終わらせたくて焦っていた。



それが命取りになった。



…そうなるのは頭のどこかでわかっていたはずなのに。