しばらく待つと、奇跡的に誓耶が帰ってきた。



ほっとして、物陰から飛び出す。



誓耶はビクッとして、顔を上げた。



「偉槻…。」


「お前、なんで電話でないんだ。
心配したんだぞ。」



偉槻は早口に問い詰めた。



どういうつもりだ?



着信履歴が残ってるから、気付かなかったなんてことはないはずだ。



てっきり、何か理由が聞けるかと思っていた。



だが、誓耶の口から出てきたのは…



「嘘つき…。」


「え?」


「偉槻、嘘ついた。」



俯きがちだった顔を少し上げ、誓耶は苦しそうな顔で偉槻を睨んだ。



…何を?



いつ?



嘘を吐いた覚えはまったくない。



が、誓耶は顔を歪めて偉槻を見つめていた。



「どういうことだ、誓耶。
俺は嘘なんかついた覚えないぞ。」


「彼女、いないって言った。」


「ああ、言った。」


「こないだ、あんたの彼女だって人があたしのところに来た。」



は?



待て待て、彼女?



記憶の許す限り、探ってみるが、まったく覚えがない。