茉理子はふふんと笑って、また髪を掻き上げた。



誓耶は心が冷えるのを感じた。



寝たことがあるって…。



この歳になれば、どういう意味かわかる。



…偉槻?



黙った誓耶に、茉理子は勝ち誇ったように言った。



「とにかく、もうイツキには近寄らないで。
小蝿が鬱陶しいったら。」



黙っている誓耶をそのまま置いて、茉理子は車に乗り込んだ。



赤いスポーツカーは、唸りを上げて、走り去る。



誓耶はその場に立ち尽くした。



偉槻、嘘ついた?



あたしに言う必要ないから?



どうして?



あたしはどうしたらいい?



偉槻に付きまとってる女から、さっきの茉理子を守るためにあたしを利用してるの?



疑問が頭を回らなくする。



誓耶はゆっくりと家に向かって歩き出した。