胡蝶蘭

「偉槻、これはどうかな?」



しばらくして、誓耶は服を何着か持って戻ってきた。



その顔の嬉しそうなこと。



誰の服を選んでるんだかわからない。



「仲がよろしいんですね。」



店員が微笑ましくそれをみて言った。



恥ずかしくなって、顔を背ける。



別に、付き合ってるわけじゃない。



いつもならムキになってそう返すのに、今日はなぜか気恥ずかしくて何も言えなかった。



「な、な。
このセーターとか、落ち着いてて偉槻っぽくないか?」


「これか?
…ちょっと派手じゃ?」


「いやいや、合わせてみ?
着たらそんな違和感ないだろこの色。」



言われて身体に当ててみると、確かにそうでもなかった。



値段も手ごろだ。



誓耶の見立てだ、買っとくか。



ふむ、と唸って脇に抱えると、誓耶が嬉しそうに笑った。



「なんだよ。」



照れて頭を小突いてやると、よろけながらも誓耶は笑った。



「偉槻があたしのお勧め聞いてくれた。
趣味合ってよかったぁ。」


「たまたまだ、たまたま。」



ったく、こいつは。



しかし、あながち偉槻に外れてはいないセンスに嬉しくなった偉槻だった。











結局、偉槻は誓耶の勧めるものを全部買おうろして、誓耶に叱られた。