胡蝶蘭

「そんなことねぇよ。」



だからそんなしんみりすんな、とテーブル越しに殴られる。



うん、とつぶやいた声が我ながら湿っていた。



「お待たせしました~。」



つたない日本語で、ウエイターがカレーを運んでくる。



「おおっ。」



これが噂のナンだ。



白いパンみたいなものが、でかでかとお盆を占拠していた。



「良い匂い…。」



食欲がそそられる。



向かいでは偉槻がさっさと手を拭いていた。



早速、誓耶も手を付ける。



カレーに浸し、口に放り込む。



何とも言えない絶妙な辛さ。



誓耶は声を上げずに悶絶した。



「どうした、辛いか?」



偉槻が心配そうに身を乗り出してくる。



誓耶は思い切り首を振って、旨いと表現した。



「そうか。
よかったな。」



誓耶のがっつきっぷりに、偉槻は苦笑いだ。



う・ま・い!