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こんなとこでカレーなんか滅多に食べない。
滅多とない機会に、誓耶は落ち着きなく店内に視線を走らせた。
向かいでは偉槻が何をするでもなく、座っている。
ちらりとそれを眺めながら、ああ幸せだなぁなんて思ってみたり。
まさか、本当にこうやって偉槻と出かけられる日が来るなんて思ってなかった。
嬉しい反面、怖くもある。
一緒にいられる幸せを知ってしまった。
もし、拒絶されたらと思うと恐怖が倍増だった。
「なあ、偉槻。」
「あ?」
ぼーっとしていた偉槻は誓耶の声に顔を上げた。
「前に彼女いたことあるのか?」
「…なんでお前にそんなこと言わなきゃなんねーんだ。」
「いいじゃん。
あたしも立ち回りやすいし。」
とかなんとか、苦し紛れにこじつけてみる。
偉槻もそれをわかっているのか、呆れたようにため息をついた。
やっぱ、教えてくれないだろうな。
ってか、あたしなら言わない。
ま、いたことないけど。
「…いたよ。」
無理かと諦めた頃に、偉槻がぼそっと言った。
…え?
「一年くらい前にな。」
「…そっか。」
やっぱ、付き合った女くらいいるよな、そりゃ。


