胡蝶蘭

まったく、面倒な奴…。



もしかしなくても、俺はだいぶヤバいことに足を突っ込んだらしい。



誓耶のことも心配しなくてはいけないが、まずは自分の身を案じたほうがよさそうだ。



偉槻は頬をぽりぽりと掻いた。



「偉槻、何がいい?」



と、先を行っていた誓耶が振り返った。



「お前が決めろよ。」


「あたし、基本なんでも好きだぞ。」


「じゃあ、そのお前の基本好きな中から選べよ。」


「だから、基本なんでも好きだから選べないんだろ。」



偉槻は誓耶の歩調に合わせながら、考えた。



「偉槻が食いたいものを、あたしも食う。」



俺が食いたいもの…。



レストラン街を歩いていると、いろいろな匂いが漂ってくる。



両側に視線を走らせながら歩いていると、ふとカレーに匂いが。



「カレー…。」



立ち止った偉槻に気付いた誓耶が、戻ってくる。



「カレー。」


「カレーがいいの?」



誓耶は偉槻がみている店を眺めた。



「へぇ、インドカレーかぁ。
ナンついてるぞ、ここ。」



そこはチェーンの店ではなく、凝った料理屋らしい。



本格的なセットがメニューに出されていた。



ナンなんて、久しく食していない。