胡蝶蘭

が、店を出たところで誓耶が立ち止った。



「偉槻、ちょっと待ってて。」


「あん?」



聞き返そうと振り向くと、既に誓耶は駆けていったあとだった。



なんなんだ?



しばらくすると、誓耶が小走りで戻ってきた。



「なんだったんだ?」


「内緒。」


「なんだよ…。」


「それよりいいの、ここ店だろ?
物も買ってないのに、荷物押し付けていいのかよ。」



誓耶が真っ直ぐに自分を見ているのがわかった。



敢えて目を合わせない。



無言でやり過ごそうとしたら、舌打ちされた。



…怖ぇよ。



「で、どうする?
昼、食うか?」


「うん。
でも今、どこも混んでるんじゃねぇか?」



言われて時計を見ると、11時。



「いや?
12時とかならアウトだろうが、11時ならまだ大丈夫だろ。」


「そうか。
じゃ、先に食っとこう。」



意気揚々と歩き出す奴の後ろをついて行きながら、ちらっとあたりを窺う。



やっぱり…。



少し離れたところに匡の姿があった。



なんでこいつはこんなに誓耶に依存してんだ?



まさか惚れてるとか?



いやいや、まさか。



にしても、気持ち悪い奴。



ストーカーだぞこれ。



背筋に寒気が走った。