胡蝶蘭

「ったく、誓耶も無闇に手ぇ出すな。
俺いるだろ、少しは落ち着け。」



うん、と誓耶はまた偉槻の後ろに隠れた。



ったく、もう。



「で、久し振りに来てくれた偉槻は何しに来たの?」



少しゆったりとした口調で、堀川は偉槻の前に立った。



「ギターのご用命?」


「いや。」



偉槻は誓耶が腕に抱えていたダウンと自分のものを、堀川にずいと差し出した。



「荷物、預かっといて。」


「は?」



斉木がポカンと口を開ける。



「何て?」


「荷物。
預かって。
また帰る頃にとりに来る。」


「お前な、言ってることめちゃくちゃだぞ。」



しかし、偉槻は手を引っ込めずに待った。



「偉槻ってさ、たまに常識じゃ考えらんないことしだすよね。
一番マトモに見えるのに。」


「俺がマトモなのは確かだ。」


「よく言うぜ。」



なんだかんだ言いながらも預かってくれるらしい。



偉槻は軽く手を上げて、礼を言った。



「誓耶、行くぞ。」


「うん…。」



誓耶はおとなしく後をついてくる。