胡蝶蘭

「そんなん、知ってんだ。
あんまり来ないって言ってたのに。」



常連みたいだな、と誓耶が言うのを聞いて、偉槻は笑った。



そんなんじゃないんだな。



「こっち。」



エスカレーターを昇り、ひとつの店に入る。



「え、ここ?」



誓耶が偉槻の服の裾を引っ張った。



「ああ。
いいからついてこい。」


「うん…。」



黒く塗られた壁。



壁に飾られた髑髏の旗。



誓耶はその風景に戸惑っているらしい。



確かに、明らかにロッカーのあるような場所ではない。



そもそも、偉槻が目指しているロッカーは階段の下などに置いてある通常のロッカーではないのだ。



ふふん、と笑って、偉槻は店員に話しかけた。



「よお。」


「おおっ、偉槻!」



半歩後ろで、誓耶がまたいっそう強く偉槻の服を握った。



振り向いた男はピアスを開けた、いかにもなニイチャンだったのだ。



「久し振りじゃねーか。
お前、最後に来たのいつだっけ?」


「去年。」


「あっさり言うんじゃねーよ。
もっと顔みせに来い。」


「嫌だ。
言ってんだろ、俺はこんな人混み嫌いだって。」



じゃあなんで今日はいんだ、と男は口を尖らせた。



そして、ふと後ろの誓耶に気付く。