胡蝶蘭

「あ、入口が目の前!」



隣で誓耶がはしゃいだ声を上げた。



「おあしす!」


「はいはい。」



速足になる誓耶の無言の要求に微笑み、偉槻は誓耶のペースに合わせた。



「お前歩くの速いな。」


「え、そうか?
普通だろ。」


「俺にとってはな。
女はもっと遅いだろ。」



一般的に。



偉槻自信、追い抜かすのは男よりも女が多い。



「確かに。
でも、あたしは一般女子よりもせっかちらしいんだ。」


「なるほど。」



そういう問題かと思ったが、あんまりにも誓耶が真剣に言うので、偉槻は黙っていた。



自動ドアをくぐり抜けると、もわっと暖かな空気に包まれた。



「ほわぁ~。」



誓耶が身体の力を抜く。



「変な声出してんな、アホウ。」


「へいへい。」



ダウンを脱ぎながら、偉槻は誓耶を小突く。



ペシッとダウンの袖ではたいて歩くように促し、偉槻は自分だけさっさと歩き出した。



「荷物、ロッカーに預けとこう。」


「え、お金いるじゃん。」


「いらない穴場知ってる。」



偉槻はニヤリと誓耶を振り返った。



きょとんとした顔でついてくる。