胡蝶蘭

「夜更かしは駄目ですよ~。」



からかうように言う誓耶を、偉槻はまた身体で突き飛ばした。



「うわっ!?」



完全に油断していた誓耶はよろめいて倒れかけた。



血相を変えて偉槻は腕を引っ張る。



さすがの誓耶も青ざめていた。



「…大丈夫か?」


「うん…。」


「行くぞ。」


「うん…。」



二人並んでとぼとぼと歩き出した。



力の加減が難しい。



なんだか誓耶から目を離すのが怖くなってきた。



もう、気軽に体当たりは出来ない。



ついつい、自分のさじ加減で彼女に接してしまい、危うく怪我をさせてしまいそうになる。



自分の女扱いの下手さにため息が出た。



「なんか、あたし達、恋人には見えねーな。」


「あん?」


「だって、体当たりで彼女こかす男なんていねーだろ。」



偉槻はプッと吹き出した。



「確かに。
いてたまるか、だな。」


「でも、あたし達の場合はこれでいいよな。」


「ああ。」



誓耶が偉槻を見上げて微笑んだ。



…こいつもだいぶ俺に笑顔を見せるようになってきたな。



最初のころは皮肉めいた顔でしか笑わなかったのに。