胡蝶蘭

昨日の夜のことも。



みるみる慎吾の顔を強張ってく。



組んでいた手を解いて、顔を覆ってしまった。



「慎吾…?」



自分で聞いて呆れるほど、情けない声だった。



大丈夫、と慎吾は手を上げる。



それでもすぐにまた顔を覆ってしまって、とても大丈夫そうには見えなかった。



今度は誓耶が慎吾が落ち着くまで待った。



無理矢理頼んだシェーキはもうどろどろだろう。



「引き取られたときからそんなんだったわけ?」



ふいに慎吾が声を出した。



手はまだ顔を覆っている。



「ううん。
さすがに最初のほうはキスとかだけだった。
でも、あたしが高校生になったら…。」


「やられたわけ。」



慎吾の手が外れた。



その顔はこの五年付き合っていてもみたことのない顔で。



誓耶は怖くなって身体を抱いた。



「なんでもっと早く言わねーの。」



慎吾の目が誓耶を睨む。



また顔が下を向いた。



そんなの、言えるわけない。



「男みたいに振舞うのも、それのせい?」



誓耶は答えない。



慎吾は苛立ってテーブルを叩いた。



まだ人がまばらな店内に、その音は異様に大きく響いた。