「そうか。」



くっくっと、偉槻は笑う。



口元に手をやり、ちらりと可笑しそうに誓耶をみやってまた笑った。



「何。」



少しむっとして睨む。



偉槻は笑ってスルーして、一言口にした。



「お前、いい声してたぞ。」


「え!?」



何、褒めてんの?



バッと振り向くと、澄ました顔をしている。



正面を向いていた目が誓耶に向けられ、誓耶は急いで目をそらした。



「からかうなよ、人が悪りぃな。」


「俺は嘘は吐かない。」



…それはどういうこと?



「こないだは俺に歌わせやがっただろう。
今度、お前が歌ってみろよ。」


「や、やだよ。
なんだよ急に。」


「今お前の声聞いたばっかなんだから、当たり前だろ。
つべこべ言わずに歌えって。」


「やだって。」



しっつこいなぁ、と背中を殴ってやる。



偉槻はピンと背中を伸ばして顔を歪め、次の瞬間誓耶に襲いかかった。



「…てンめぇ…!」


「ッぎゃー!?」



電光石火で腕を捻り上げられ、誓耶は絶叫した。