胡蝶蘭

「ったく、お前らはどこぞのバカップルか。
その会話、傍から聞いたら甘々だぞ?」



よく恥ずかしげもなくそんな会話できんな、と健は呆れ顔だ。



だって、なぁ?



誓耶は偉槻を見上げる。



なぁ?と偉槻も頷いた。



「別に付き合ってないもん。」



自分で言っておいて、胸が痛んだ。



怖くて偉槻を見れない。



平然としてるんだろうな。



誓耶は真っ直ぐに健を見ていた。



「なんだ、そうなのか。
てっきりお前の女だと思ってたよ。」


「こいつ、女であって女じゃねーし。」



ズキン、と胸が痛んだ。



まただ。



偉槻には女扱いしてもらいたい。



なんで?



女扱いは、子猫扱いは嫌だと望んだのはあたしなのに。



「なにそれ、失礼だろ偉槻。」



千博が声を尖らせた。



偉槻は怯んだように、千博を見る。



「違うんだ、あたしが女っぽくないから…。」


「いいや、違うね。
俺からみたら、誓耶ちゃんは可愛い女の子だよ。」


「…どうも。」



ほら。



千博に可愛いって言われても嬉しくないのに。



偉槻、あんたには言ってほしい。