健がニヤッと笑って偉槻の隣に立った。



そして、即興で合わせ始める。



覚えてないかもしれないと言っていた割には、毅の音は自信あり気だ。



そして、それはしっかりと合っている。



偉槻な内心舌を巻いた。



まったく、俺の方が危ないぞ。



歌いながら、視線で健を睨む。



健は顔全体で得意げにアピールして見せた。



まったく、奴の場合、可愛げがないのか頼もしいのか。



二人で弾き語っていると、あとの二人も参入してきた。



千博が遠慮がちにドラムを叩く。



祐司も様子を見ながら合わせた。



気持ちいい。



観客はいなくていい。



ただ、俺達は俺達の音楽を楽しむ。



下手だと言われることもなく、上手いと誉めそやされることもない。



それが心地いい。



俺達のモットーは、自由だ。



健が隣で気持ちよさそうに飛び跳ねる。



偉槻は呼応するように声を張り上げた。