「あれ、田中は?」


「ああ、置いてきた。
あいつ、遅いんだって。」


「道理だな。」



久し振り、と拳をぶつけてきたのは千博(チヒロ)。



こいつも同い年で、実は市役所務め。



俺達の中で唯一のエリートだ。



清楚な見てくれなくせに、ドラムを叩き始めると人相が変わる。



そして、祐司(ユウジ)。



ベース。



こいつは一つ上だ。



偉槻の高校の先輩で、このバンドとも呼べないような寄せ集めのリーダー。



もとはと言えば、祐司が高校で偉槻にバンドを教え、卒業後に声をかけてこれを作った。



そして、田中。



こいつの紹介はしたくない。



欠点しか言えない気がする。



「ま、田中はほっといて、今日はどうする?
俺、最近ギター触ってないから上手く合わせられるか心配なんだけど。」


「俺も。」


「…適当でいくか?」



にやり、と健が笑った。



「「「適当で。」」」



こういうところは息があっている気がする。



一通り挨拶を済ませたところで社長は帰っていき、本格的に活動が始まった。