胡蝶蘭

「みんな俺に冷たい…。」



ぐすん、とこれ見よがしに泣き真似をする。



いや、お前の場合はからかわれてる。



つまり、可愛がられてるんだよ。



と、本人に言っても信じないだろうがな。



「そういえば。
なんで誓耶はあんなしゃべり方なんだ?」



ふと、誓耶の話し方を思い出して問う。



今さっきまでふざけていた慎吾は途端に神妙な顔つきになった。



「うーん、俺が話してもいいのか。」


「話せ。」


「いやさ、誓耶のプライベートなことだから。」



どうしても口を割らないのか。



「あいつの従兄のことと、兄貴のことは聞いたぞ。」



ぼそっと言ってやると、慎吾は驚いて目を見開いた。



「そんなとこまで話したのか?」


「ああ。
ちょっとわけありで。」


「そ。
敢えてわけを聞かずにおく。」



慎吾は優しく笑った。



…なんでそんな微笑むんだ。



偉槻の問うような視線に気づき、慎吾が笑う。



「いや、誓耶が身の上話するなんてよっぽど信頼してんだなと思って。
俺以外に事情話したの多分大神が初めてだ。」



言外に、誓耶は慎吾のことを信頼していると言われたようで悔しかった。



…なんで悔しいんだ俺。