胡蝶蘭

「なんとなく歩いてた。」


「はぁ?」



慎吾はガリガリと頭を掻く。



「お前さぁ、いきなり朝の四時に人のマンションのインターホン鳴らして、朝飯食らった挙句、外行こうつって連れ出して何?」


「ゴメン…。」



誓耶は俯いた。



ただ、独りが嫌で。



何となく行き着いたのが慎吾の家だったのだ。



「なんかあった?」


「言わない。」


「なんだよ、あんのかよ。」



誓耶は答えず歩き出した。



少し遅れて、慎吾も歩き出す。



足の長い慎吾はすぐに誓耶に追いついた。



「待てよ。
お前さ、前から思ってたけどなんでそんな家に帰りたがらないんだ?」



どきりとした。



顔を強張らせた誓耶の腕を掴み、慎吾は近くのファーストフード店に入った。



有無を言わせずオーダーし、一番奥の席に陣取る。



テーブルの上で手を組んで、慎吾は話すまで放してくれそうにない雰囲気だ。



「誓耶。」



誓耶は顔を背ける。



人に言えるようなキレイな話ではない。



ましてや、慎吾に話してどんな顔をされるのかを考えると怖かった。



「誓耶、言いな。」



時々、誓耶は慎吾に全てを投げ出してしまいたくなる。



今がまさにその時だ。



こういうときの慎吾はとても頼れそうな顔をする。



それが先輩後輩に関わらず、人に好かれる原因だろう。