胡蝶蘭

「あたし?」


「そうそう。
どうやら共通の知り合いだったみたいだぞ。」


「え、あたし大神なんて知らない。」


「え、知ってるんだろ?
誓耶なんてそうそうある名前じゃねーぞ。」



でも、知らない。



だいたい、運送会社で働くような年齢の男と付き合いがない。



慎吾は別として。



「え、人違いか?
まさか…。」


「でもホント知らねーよ?」


「ケータイ拾ったんだろ?」


「あ、ああ!」



偉槻か?



苗字を知らなかった。



…表札に大神って書いてあったのか?



「知ってるだろ?」


「ああ、知ってる。
偉槻だな?」


「ああ、そうそう。
偉槻って呼んでる人いた。」


「わかったわかった。」



同一人物か。



ってか偉槻、運送もしてんだ。



「あたしの話題になったんだ?」


「そうそう。
俺が慎吾って呼ばれてるの聞いて、まさかと思ったんだって。」


「へぇ。
すごいな、奇跡だ。」