胡蝶蘭

「まぁ、とにかくあいつに友達が一人増えてよかった。
あいつ一匹狼だから、深く関わってる友達いなくって。
…バレンタインになると男よりチョコもらって帰って来るんだけど、友達と遊んでるの見たことなくって。」



お兄さんは心配なわけですよ、と慎吾は笑った。



「でも、お前のこと随分信頼してるみたいだったぞ。」



俺に彼氏を騙らせるくらいだからな。



偉槻がちらりと見ると、慎吾は嬉しそうに、恥ずかしそうに顔をそらした。



「そうだと嬉しいけどな。」


「そうだろ。
俺に延々とお前の話聞かせたぞ。」


「え゛、どこまで?」


「内緒。」



ニヤッと笑って意地悪すると、慎吾は子どものように喚いた。



「どこまで?
どこまであいつ吐いた!?」


「さぁな。」


「あの馬鹿、ぜってーロクなこと言ってねー!」



いきり立つ慎吾。



…お前、誓耶はお前のこと信頼できる奴って言ってたぞ。



とは絶対に教えてやらない。



真っ直ぐな奴だって認めてたのも言わない。



でも、



「危なっかしい奴って言ってた。」



これだけは教えてやる。



「あんちくしょう!
今度うち来てもぜってー入れてやんね!」



…とか言って。



俺が理解できないくらい信頼しあってるくせに。



笑えてきた。



まったく、似た者同士だな。



関わると面倒なことこの上ない。



…ただ、気持ちがいいということは認めよう。