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「厄介な奴…。」
演奏を終えて、ため息をつく。
人が歌ってやってるのに寝て。
中盤あたりから、誓耶が身体の力を抜いたのは気付いていた。
そして、すぐ眠りに落ちたのも。
それでも歌い続けていた自分。
久し振りにギターに触ったからだ、と結論づける。
「まったく。」
寝顔が年相応の女に見えて、少し焦る。
普段、あまりにも振る舞いがガサツ…というかなんというかなので、ギャップがありすぎる。
何なんだこいつは。
本人はわざと男のように振る舞っているが、他人が見ればしっかりと女らしい顔立ちをしている。
何だってこいつはこんなに勿体ないことをしているんだ。
黙ってれば可愛いであろうこの顔。
そこそこモテるだろうに。
「しっかし、ここで寝るなんて…。」
これは運ぶべきか?
ここで布団をかけてやるべきか?
散々悩んだ挙句、ここで寝かせることにした。
なんだか触るのが気が引けた。
布団を敷いた部屋から、布団を持ってくる。
なんと手間のかかる。
なるべく誓耶に触れないように、布団を着せかけてやり、偉槻は部屋の電気を消した。


