胡蝶蘭

期待を込めた目で偉槻を見上げると、偉槻は照れたように目をそらした。



「下手って言うなよ。」


「言わないよ。」



曲は?と、リクエストを聞いてくれるらしい。



「俺が覚えてる曲しか無理だぞ。」



どっかと腰をおろしながら、偉槻は恥ずかしげに誓耶をみている。



そうだなぁ…。



「あれは?
ほら、__。」


「ああ。
俺も好き。」



どうやら知っているらしい。



だいぶ前の曲だから、忘れているかもと思ったが安心だ。



「お前もこのグループ好きなのか?」


「うん。
歌詞が好き。
飾らない言葉が、心地いい。」


「…同じ。」



ふふっと、偉槻が笑う。



抑えた声が、誓耶の心をくすぐる。



打ち解けた感じが、嬉しかった。



「じゃあ、行くぞ。」


「歌って?」


「…注文が多い。」


「いいじゃん。
弾き語りなんてやれる人いないんだから。」


「そこら中にいるだろ、ストリートミュージシャンとか。」



いいから、とねだると、結局偉槻は折れた。