胡蝶蘭

「…なんもやってないな。」



11時台のバラエティももう終わり、やっているのは興味のない番組ばかり。



偉槻は誓耶を振り返った。



「お前、テレビ観たいか?」


「ううん。」



それより、と誓耶は笑う。



「偉槻のギターが聞きたい。」



はぁ?と思い切り顔をしかめる。



「俺のギターだぁ?」


「うん。
偉槻は弾くだろ?」


「まあ、そうだけども。」



弾くのか、と偉槻が弱ったように頭を掻く。



その仕草がいつもとは違って、少し可愛かった。



「聞きたい。」



もう完全に聞くモードになった誓耶は壁際まで下がる。



壁にもたれて早くと催促するも、偉槻は下顎を突き出した



「嫌だ。
なんで俺が。」


「聞きたい。」


「嫌だって。」


「聞きたい。」



偉槻が何をどう思ったかは知らない。



偉槻はゆっくり立ち上がり、部屋を出ていった。



そして、戻ってきたときには片手にギターを持っていた。



わぁ、弾いてくれるんだ。