胡蝶蘭

「お前ほどふてぶてしい女初めてだ。」



…それはあんたに好かれたくて女がいい顔してたからだ。



また睨んでやる。



偉槻はその視線に気づいて、また眉をひそめる。



「なんだよ、怒ってんのか?」


「…。」



返事を返さずに視線をそらすと舌打ちされた。



少し胸が痛む。



「ったく…。」



わかんねぇ奴、呟いて、偉槻はテレビをつける。



途端に静かだった部屋が、うるさくなる。



偉槻は急いで音量を下げた。



「お前、見たい番組でもあるか?」


「ない。」


「いつも家でなに見てる?」


「見ない。」



はぁ?と偉槻が思いっきり不審な顔をする。



だって、と誓耶は口ごもる。



「リビングではいっつも伯父さん達がいるし。
部屋にはテレビないし。」


「なんだよ、伯父さんとも仲悪いのかよ。」



っていうより、



「向こうがあたしを嫌ってんの。」


「…親同士は仲良くなかったのかよ。」


「だって、もともと疎遠だった兄貴がいけ好かない女とのガキ残して蒸発して、それのお守を押し付けられたんだよ?」



嘲るように、誓耶が言うと、偉槻は驚いたような顔をした。



「そうか…。」



また沈黙。



誓耶はふんと鼻から息を吐いた。



そうだ、もとからうちの家族は歪んでるんだ。