胡蝶蘭

偉槻が戻ってくる足音がした。



誓耶はふっと顔を上げる。



偉槻はダルそうに頭を掻いていた。



「敷いた。
好きな時に寝ろ。」


「…ありがと。」



大きな目が、あたしを見下ろす。



線の入った眉。



日本人にしては珍しい、通った鼻筋。



刈った髪。



こんな色男を、放っておく女なんて確かにいやしないな。



…こいつは自分の魅力を知って、「どこをみて判断した?」なんて言ってるんだろうか。



あんたが女に困ってないって言ったのと、あんたの容姿をみて判断したんだよ。



そう思って、少し傷つく。



あたし、このまま考えてたらおかしくなりそうだ。



「なんだよ。」



じっと見つめていたからか、偉槻が不審そうな声を出す。



そして窺うように誓耶を見た。



「別に。」



悔しさ紛れにそう言って、ぷいっと顔を背ける。



偉槻は不機嫌そうに呻いて部屋に入ってくる。