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あたしが偉槻を信頼する理由。
それは、慎吾と同じ臭いがするから。
言い方はきつくても、嘘はつかない。
無愛想でも、真っ直ぐだから。
彼氏のふりをしてくれなんて無茶を頼んだときも、出来る限りの安全策を敷いた。
今日、身の上話を聞いてくれと言ったときも、全部を背負いきれはしないと言った。
もしあそこで、「俺が全部受け止めてやる」なんてクサイ台詞がきてたらあたしは話さなかった気がする。
つくづく勝手な女だ。
でも、あそこで「俺に出来ることがあれば助ける」という姿勢で誓耶に向き合ってくれた。
普通なら綺麗事を並べて誓耶を労わるだけだろう。
…信用する理由には不十分か?
誓耶にとってはそれが重要な決め手となった。
同情なんかいらない。
同情するなら金をくれ、だ。
何を根拠に偉槻が変な気を起こさないと思うかだって?
そんなの、偉槻が前言った。
あたしを一人の女としてみるくらい飢えてはいないって。
そういう相手ならいつでも引っ掛けられるってことだろ。
こんな魅力も色気もない女子高生なんか相手にしないってわかってるから彼氏役も、宿も頼んだんだ。


