胡蝶蘭

許してくれなんて、言える立場じゃない。



でも、今のが精一杯の謝罪だ。



「…でも、なんでお前俺んとこに来た?
その仲良くしてる友達んとこ行けばいいじゃねーか。
俺みたいな信用出来ねぇ男んとこ来て、またなんかされたらどうする?」



誓耶は口元を歪めて言った。



「何、発情してんの?」


「いや、そうじゃないけど…。」


「慎吾のとこには行けない。
前、匡のこと口割らされたとき、凄い怒られた。」


「怒る?」


「なんでもっと早く話さなかったって。」



ああ、そういう。



確かに、俺でも怒る。



そんなに前からの知り合いだったなら。



「慎吾は真っ直ぐなぶん、純粋に戦おうとするから危なっかしい。
またあたしがこんな恰好で現れたらキレてなにするかわかったもんじゃない。」



それに、と誓耶が口ごもる。



「あんたならそんな変な気を起こさずにいてくれると思った。」



上目づかいに見上げられ、偉槻は視線をそらした。



どこに俺を信頼する要素がある?



俺はただケータイを拾ってもらって、一晩泊めたってだけのただの見知らぬ男だ。



「よくも無条件にそんなことが言える。」



偉槻の声に、誓耶が振り向いた。



「どこを見て、お前はそう判断した?」



俺だって、盛ってる年頃の男だ。