胡蝶蘭

誓耶は缶のプルトップを開けながら、首を振った。



「ううん。
兄ちゃんが死んでから、いきなりあたしに…。」



そこで、誓耶が黙った。



不思議に思って偉槻が顔を上げると、誓耶の顔が大きく歪んでいる。



「…大丈夫か?」



うん、と頷く顔が大丈夫ではない。



「やめとくか。」


「ううん、話しとかなきゃ偉槻に悪い気がする。」


「別にいいけど。
お前が楽になるんなら話せ。」



偉槻は大きく缶を呷った。



誓耶もそれをみて真似る。



「どうだ、飲めるか?」


「うん、ジュースみたい。」


「まあ、半分ジュースだからな。」



で?と結局偉槻が促す。



「日常的にキスされてんのか?」


「うん…。」


「それ以上は迫ってこないの?」



沈黙。



答えが読めた。



どこまでやられてんだよ。



「ヤられたわけ?」



誓耶がぐっと唇を噛みしめる。



嘘だろ、と偉槻は長い息を吐く。