胡蝶蘭

「はて。」



首を傾げる匡に、あのことを説明する。



ああ、と手を打った匡はそばの引き出しを開けた。



「これだ。」



そういって、小さな機械を誓耶に放り投げる。



「忘れてたよ。
なんでもっと早くに来ないの。」



馬鹿だね、と笑った。



「俺、ずっと忘れてたのに。」


「あんまり早くに来ると意地悪されそうだったから。」


「やだなぁ、俺ってどう思われてんの。」


「鬼畜。」



ボタンを留め直す誓耶を引き倒し、匡は囁いた。



「なに、そうなってって?
仕方ないなぁ。」



また濃厚なキス。



顔をよじって、それを抜け出した。



「あたし、部屋戻るから。」


「なんで?
好きでしょこれ。」


「嫌い。」



どこをどうとって、あたしが喜んでると?



さっとドアまで逃げ、誓耶は匡を振り返った。



「あぁ、あたし、彼氏いるから。」



匡の反応を見ずバタンとドアを閉めた。