胡蝶蘭

いいよ、と大仰に手を振り、店長は先に戻っていった。



少し息を整えてから、偉槻も戻る。



店内を見回すと、カウンターに女が座っていた。



今日は一人らしい。



酒をちびちびと舐めている。



…俺がそばに来るのを待ってるのか。



出来るだけ回避しなければ。



偉槻は目を合わせないように注意しながら、女を観察する。



幸い、相手は偉槻に気づいていないようで、声はかけられない。



偉槻はさり気なく顔を隠しながら、仕事を開始した。